心理学統計の検定を用いて森鴎外の「山椒大夫」を考える5


具体度2

正道はうっとりとなって、この詞に聞き惚れた。そのうち臓腑が煮え返るようになって、獣めいた叫びが口から出ようとするのを、歯を食いしばってこらえた。正道2 母親1

たちまち正道は縛られた縄が解けたように垣のうちへ駆け込んだ。そして足には粟の穂を踏み散らしつつ、女の前に俯伏した。正道2 母親1

右の手には守本尊を捧げ持って、俯伏したときに、それを額に押し当てていた。女は雀でない、大きいものが粟をあらしに来たのを知った。正道2 母親1

そしていつもの詞を唱えやめて、見えぬ目でじっと前を見た。そのとき干した貝が水にほとびるように、両方の目に潤いが出た。正道1 母親1

女は目があいた。「厨子王」という叫びが女の口から出た。二人はぴったり抱き合った。正道2 母親2

花村嘉英(2019)「心理学統計の検定を用いて森鴎外の「山椒大夫」を考える」より


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