観察者として作家の執筆脳を考察するシナジーのメタファーに関し、この小論の分析から見て社会のあらゆる側面を考察の対象にする観察社会学的な意義を以下にまとめる。
◆作家の執筆脳の分析は、まだ世界的に実例が少ない。自分の専門や比較が中心で、共生を交えたマクロの研究が乏しいためである。人文以外の系列がブラックボックスからグレーになる位で調節するとよい。Lのフォーマットでスライドする際に信号が通るようになってくる。信号が通らなければ、執筆脳は、見えてこない。
◆執筆脳が見えてくると、専門のみならず副専攻も含めた様々な研究を縦横にまとめることにもなり、広義、狭義を問わず、シナジーのメタファー全体のバランスが整ってくる。
◆文学研究についても社会学同様に、ミクロとマクロのみならず、その中間に当たるメゾのデータが増えれば、研究の幅が広がり密度も濃くなり、実験が複雑で多様になる。
◆作家が観察者として自然や文化に触れるときは、いずれも五感と連携があり、言語、記憶、感情、思考、判断、意欲、適応能力(知能)などが考察の対象になる。これが特にメンタルヘルスの枠組みで人文と医学の組を成し、シナジーのメタファーの研究を個人(狭義)でも集団(広義)でも有意味なものにしてくれる。
◆学習を通して観察社会学でいう目が輝く瞬間とシナジーのメタファーの信号の流れでいう何かの分析→直観→エキスパートの接点は、身体全体の信号の流れが掴めれば、興味深く詳細に記述できる調整所になる。
◆この小論で取り上げた作家群の分析から予測できることは、共生について調節に遅れがみえる人文科学でも文理に通じるデータベースを作成する文学分析が近い将来専門家の共通認識(コンセンサス)になることである。そうなれば、比較と共生による調整は、加速するであろう。
◆文芸を広義にとらえた場合、アニメーションの宮崎駿監督もトトロの森に生息する虫の目を通して現実の社会を観察するテーマで研究を続けている。観察社会学でいう目が輝く瞬間は、ここにもあるに違いない。
花村嘉英(20202)「社会学の観点からマクロの文学を考察するー自然や文化の観察者としての作家について」より