社会学の観点から文学をマクロに考えるー自然や文化の観察者としての作家について1


1 はじめに

 この論文は、小説のデータベースを作成しながら、作家の執筆脳を集団の脳の活動として広義に説明するために、前回に引き続き、社会のあらゆる側面を考察の対象にする社会学の観点に基づいたマクロの文学分析を試みる。
 これまでは作家の執筆脳としてシナジーメタファーを作家毎に狭義で研究してきた。今回は、作家としての人間の条件に自然や文化の観察者というエキスパートとしての資質を設け、社会と観察という観点に立ち、シナジーのメタファーから集団の脳の活動について考察していく。
 岡田(2017)によると、観察社会学は、学習としての同一体(例、レントゲン写真)の推移に従い、ローカルな現場で学習が達成されることを目指す。つまり、医学教室で学生の目が輝く瞬間を捉えるえる試みである。目の前にあるレントゲン写真について、学習者が考える人、見る人、気づいた人、見えている人、読む人になっていく。文化とか自然の観察者も自身の知識で調節ができることを前提に、考える人から読む人になり、目が輝く瞬間が来る。この小論でいう観察者は、観察社会学に依拠した役割を担う。こうした作家の役割には、他にもリスクの管理者あるいは歴史の伝承者、書き手としての医者などが考えられる。 

花村嘉英(20202)「社会学の観点からマクロの文学を考察するー自然や文化の観察者としての作家について」より


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