森鴎外の「山椒大夫」の多変量解析-クラスタ分析と主成分4


◆場面1 厨子王が芝を刈る

厨子王が登る山は由良が嶽の裾で、石浦からは少し南へ行って登るのである。A2B1C1D2

柴を苅る所は、麓から遠くはない。ところどころ紫色の岩の露(あら)われている所を通って、やや広い平地に出る。A1B1C2D2

そこに雑木が茂っているのである。厨子王は雑木林の中に立ってあたりを見廻した。A1B1C2D2

しかし、柴はどうして苅るものかと、しばらくは手を着けかねて、朝日に霜の融けかかる、茵(しとね)のような落ち葉の上に、ぼんやりすわって時を過した。A1B1C2D2

ようよう気を取り直して、一枝二枝苅るうちに、厨子王は指を傷めた。A2B1C2D2

そこでまた落ち葉の上にすわって、山でさえこんなに寒い、浜辺に行った姉さまは、さぞ潮風が寒かろうと、ひとり涙をこぼしていた。A2B1C2D2

日がよほど昇ってから、柴を背負って麓へ降りる、ほかの樵が通りかかって、「お前も大夫のところの奴か、柴は日に何荷苅るのか」と問うた。A1B1C2D2

「日に三荷苅るはずの柴を、まだ少しも苅りませぬ」と厨子王は正直に言った。A1B1C1D2

「日に三荷の柴ならば、午までに二荷苅るがいい。柴はこうして苅るものじゃ。」樵は我が荷をおろして置いて、すぐに一荷苅ってくれた。A1B1C2D1

厨子王は気を取り直して、ようよう午までに一荷苅り、午からまた一荷苅った。A2B1C2D1

花村嘉英(2019)「森鴎外の「山椒大夫」の多変量解析-クラスタ分析と主成分」より


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