魯迅の「阿Q正伝」のバラツキについて6


2.2 標準偏差による分析

 グループA、グループB、グループC、グループDそれぞれの標準偏差を計算する。その際、場面1、場面2、場面3の特性1と特性2のそれぞれの値は、質量ではなく指標であるため、特性の個数を数えて算術平均を出し、それぞれの値から算術平均を引き、その2乗の和集合の平均を求め、これを平方に開いていく。
求められた各グループの標準偏差の数字は、何を表しているのだろうか。数字の意味が説明できれば、分析は、一応の成果が得られたことになる。 

◆グループA:五感(1視覚と2その他)
場面1(特性1、4と特性2、1)の標準偏差は、0.4となる。
場面2(特性1、4と特性2、1)の標準偏差は、0.4となる。
場面3(特性1、3と特性2、2)の標準偏差は、0.49となる。
【数字からわかること】
場面1、場面2、場面3を通して、視覚情報が多いため、「阿Q正伝」は、五感の中で視覚情報が鍵になる作品といえる。

◆グループB:ジェスチャー(1直示と2隠喩)
場面1(特性1、4と特性2、1)の標準偏差は、0.4となる。
場面2(特性1、4と特性2、1)の標準偏差は、0.4となる。
場面3(特性1、3と特性2、2)の標準偏差は、0.49となる。
【数字からわかること】
「阿Q正伝」は、当時の世相を反映させた作品のため、場面1、場面2、場面3を通して、隠喩が少ないことがわかる。

◆グループC:情報の認知プロセス(1旧情報と2新情報)
場面1(特性1、3と特性2、2)の標準偏差は、0.49となる。
場面2(特性1、2と特性2、3)の標準偏差は、0.49となる。
場面3(特性1、3と特性2、2)の標準偏差は、0.49となる。
【数字からわかること】
場面1、場面2、場面3を通して、新情報の2が多いため、ストーリーがテンポよく展開していることがわかる。

◆グループD:情報の認知プロセス(1問題解決と2未解決)
場面1(特性1、3と特性2、2)の標準偏差は、0.49となる。
場面2(特性1、0と特性2、5)の標準偏差は、0となる。
場面3(特性1、2と特性2、3)の標準偏差は、0.49となる。
【数字からわかること】
「阿Q正伝」は、当時の世相を反映させた作品のため、場面1、場面2、場面3を通して、問題未解決が多いことがわかる。

花村嘉英(2018)「魯迅の「阿Q正伝」から見えてくるバラツキについて」より


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