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  • ドリス・レッシングの Hunger” 「飢え」で執筆脳を考える7

    【連想分析1】
    表2 受容と共生のイメージ合わせ  英国人牧師Tennent氏が独房を訪れる場面

    A They bring him food and water, but he does not eat or drink unless he is told to do so, and then he eats or drinks automatically, but is likely to forget, and sit immobile, with a piece of bread or the mug in his hand. 
    意味1 1、意味2 1、意味3 1、意味4 2、人工知能1 

    B And he sleeps and sleeps as if his soul is drugging itself so that he may slip easily into death. He does not think of death, but it is there with him, in his cell, like a big, black shadow. 意味1 1、意味2 3、意味3 2、意味4 2、人工知能1 

    C And so a week passes, though Jabavu does not know it. On the eight day the door opens and a white preacher comes in. Jabavu is asleep, but the warder kicks him till he wakes, then gives him a shake so that he stands up, and finally he sits when the preacher tells him to sit. He does not look at the preacher.
    意味1 1+5、意味2 3、意味3 1、意味4 1、人工知能1 

    D This man is a Mr Tennent from the Church of England, who visits the prisoners once a week. He is a tall man, lean, grey, stooping. He moves slowly, speaks slowly, and gives an impression of distrusting even the words he chooses to use. 意味1 1、意味2 3、意味3 2、意味4 1、人工知能2 

    E He is a deeply doubting man, as are so many of his persuasion. Perhaps, if he were from another church, that which the Africans call the Romans, he would enter this cell in a different way. Sin is this, a soul is that, there would be definite things to say, and his words would have the ring of faith which does not change with changing life. 意味1 1+2、意味2 4、意味3 2、意味4 1、人工知能2 

    花村嘉英(2022)「ドリス・レッシングの Hunger” 「飢え」で執筆脳を考える」より

  • ドリス・レッシングの Hunger” 「飢え」で執筆脳を考える6

    【データベースの作成】

    表1 “Hunger”のデータベースのカラム

    項目名 内容 説明
    文法1 態  能動、受動、使役。
    文法2 時制、相  現在、過去、未来、進行形、完了形。
    文法3 様相 可能、推量、義務、必然。
    意味1 五感 視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚。
    意味2 喜怒哀楽 情動との接点。瞬時の思い。  
    意味3 思考の流れ 抵抗ありなし 。
    意味4 振舞い ジェスチャー、身振り。直示と隠喩を考える。  
    医学情報 病跡学 受容と共生の共有点。購読脳「犯罪と成長」と病跡学でリンクを張るためにメディカル情報を入れる。
    情報の 認知1 感覚情報の捉え方 感覚器官からの情報に注目するため、対象の捉え方が問題になる。例えば、ベースとプロファイルやグループ化または条件反射。
    情報の 認知2 記憶と学習 外部からの情報を既存の知識構造に組み込む。その際、未知の情報についてはカテゴリー化する。学習につながるため。記憶の型として、短期、作業記憶、長期(陳述と非陳述)を考える。
    情報の認知3 計画、問題解決、推論 受け取った情報は、計画を立てるときにも役に立つ。目的に応じて問題を分析し、解決策を探っていく。獲得した情報が完全でない場合、推論が必要になる。
    人工知能 抵抗と表明 エキスパートシステム 抵抗は、抑圧に対し感情的に逆らうこと。表明とは、考えや決意を表して明らかにすること。

    花村嘉英(2022)「ドリス・レッシングの Hunger” 「飢え」で執筆脳を考える」より

  • ドリス・レッシングの Hunger” 「飢え」で執筆脳を考える5

    3 データベースの作成・分析

     データベースの作成方法について説明する。エクセルのデータについては、列の前半(文法1から意味5)が構文や意味の解析データ、後半(医学情報から人工知能)が理系に寄せる生成のデータである。一応、L(受容と共生)を反映している。データベースの数字は、登場人物を動かしながら考えている。
     こうしたデータベースを作る場合、共生のカラムの設定が難しい。受容は、それぞれの言語ごとに構文と意味の解析をし、何かの組を作ればよい。しかし、共生は、作家の知的財産に基づいた脳の活動が問題になるため、作家ごとにカラムが変わる。

    花村嘉英(2022)「ドリス・レッシングの Hunger” 「飢え」で執筆脳を考える」より

  • ドリス・レッシングの Hunger” 「飢え」で執筆脳を考える4

     JabavuとJerryは、窃盗をしては酒を飲みカードで遊ぶ。しかし、Jerryは、Jabavuを憎んでいる。BettyがJabavuに気持ちを寄せていることもある。Jabavuは、窃盗団へのJerryの誘いを断った。Bettyが殺された。JabavuとJerry が疑われる。互いにやっていないという。酒場で飲んでいた人たちが怪しい。Jabavu のコートに血がついている。ナイフの切跡もある。アフリカでは人を殺しても捕まらない。(P.314)
     Jabavuは、助けてもらった恩のあるMizi氏の家に忍び込み金品を盗もうとする。(Hunger P.316)裏切りだ。警察がやって来てJabavuに手錠を掛けて刑務所に連行する。煉瓦の壁で石の床でできた独房に入れられても、取調べで無言を通す。一週間が過ぎた。八日目に英国出身の白人の牧師Tennent氏がやって来た。(P.325)背の高い痩せた男で信仰の自由を認めている。汚い椅子に腰かけて、Jabavu に話しかける。とても不幸なようだけど、助けてあげよう。
     窃盗団に入ったのは、間違っている。しかし、初めての犯行だったことは悪くはない。でも法を犯した罪は償うことになる。禁固1年だろう。Mizi氏からの手紙を渡すと、Jabavuの頬から涙が零れる。真実を言うように書かれていた。自身も証人として出向くからである。アフリカの刑務所にいる人たちのことを自由と正義のために考えろ、一人ではない。私たちWeという語が使われている。 
     Iを使っていた時代には、ナイフのような厳しく醜い時代があった。Weのおかげで獣が激怒する飢えが初めて拒絶されることなく、優しくWeの中に流れていく。Jabavu は手紙を読むと、Tennent氏に戻し、言うことをきくという。繰り返しWeと言うと、彼の空っぽの手の中に兄弟たちの温かい手があるように見えた。(P.331)
     レッシングは、この小説の中に1970年前後の南部アフリカで発生していた社会問題を描いている。空腹、金、窃盗、殺人、警察、牢獄、裁判は、日常茶飯事であった。そこで、“Hunger”の購読脳を「犯罪と成長」にし、飢えをもたらすアパルトヘイトという人種差別を問題視しているため、執筆脳は「抵抗と表明」にする。“Hunger”のシナジーのメタファーは、「レッシングと表明」である。

    花村嘉英(2022)「ドリス・レッシングの Hunger” 「飢え」で執筆脳を考える」より

  • ドリス・レッシングの Hunger” 「飢え」で執筆脳を考える3

     部落では常に飢餓状態にあり、人生を通して飢えた声で話している。(Hunger P.240)白人のギリシア人の商家は、思うほど豊かで強くはない。Jabavuは、自分の足に歩けと命じる。しかし、足は動かない。子供たちが見ている。自転車に乗ったアフリカ人の警察官が破れたぼろのズボンを履いた Jabavu の不幸な顔を見て英語で尋ねた。道がわからないのか、仕事を探しているのかと。(P.243)
     仕事を探すには、通行許可書が必要になる。事務所へ行かなければならない。有色人種や黒人がいる。許可書を貰うために医者の診察を受けなければならない。白人の医者は、伝染病を探す。マラリア、住血吸虫病、十二指腸虫などである。(P.249)Jabavu は、食べるものがなくて飢えていると訴える。警官が Jabavu に二週間仕事を探すことができる許可書を渡す。Jabavu は喜んだ。Mizi氏を紹介してもらった。
     事務所から歩いて行くと、煙を出している工場とか白人の墓地がある。見たことがない世界である。1シリングしかなく、飢えと金が問題である。工場だと一月に1ポンド、白人の家では一月3ポンド稼げる。(P.270)
     Mizi氏は声が多きいが、Jabavu は、何を言っているのかわからない。白人とは異なるアフリカ人のための法律を討論している。Samu氏も発言する。恥を知れ!最低賃金の集会での叫びである。 Mizi氏は、アフリカ人に良い生活をもたらそうとしている人物である。しかし、Jerryという若い男が Mizi氏は危険な男で警察が嫌っていることを告げる。(P.279)
     Jabavu は、町の街区へ行き映画を見る。カウボーイやインディアンが登場し、自分も騎乗し叫んでいる感じになる。また、Bettyという女がJabavuを好いている。インド人の商店で Jerryと新しいシャツに取り換えた。
     Jabavu は、Jerry と白人の家の物や商店の品物を盗む。時計、灰皿、スプーン、フォークなど。インド人の商店に戻り金を貰う。Jabavu は、ギャングの一味になった。Bettyは、Jerryの女で警察の友達である。街へ向かう部落の少年を使って窃盗させ、金の一部を渡す。他人に言えば、Jerryがナイフで殺すという。

    花村嘉英(2022)「ドリス・レッシングの Hunger” 「飢え」で執筆脳を考える」より

  • ドリス・レッシングの Hunger” 「飢え」で執筆脳を考える2

    2 “Hunger”のLのストーリー 

     ドリス・レッシング(1919-2013)の“Hunger”「飢え」は、The Sun Between Their Feet: Collected African Stories, Vol. 2に収録されている小説で、部落出身のJabavuという黒人少年が白人の世界に現れ、そこでの経験を通して成長する物語である。主役の成長に焦点を当てているため、一種の発展小説といえる。
    レッシングは、1919年、イギリス人の両親のもとイランに生まれ、1925年父がトウモロコシや作物を作るために購入した南ローデシア(ジンバブエ)の地に移住した。少女時代は、ハラレにあるドミニクコンバート女学校で教育を受け、15歳で家を離れ南アフリカで看護婦として働いた。1937年に電話のオペレーターになり結婚する。二児をもうけるも1943年に離婚した。
     その後ロンドンに移住し、反核運動や反アパルトヘイトの活動に関与した。また、ハンガリーやアフガニスタンへのソビエトの進攻に反対し、ニューヨークタイムズに論説を発表した。創作活動については、1950年に「草は歌っている」でデビューし、50以上の小説を出版している。2007年にこれまでの最高齢になる88歳でノーベル文学賞を受賞した。1990年代後半は、脳卒中を患っていた。 
     Jabavuには3歳年上の姉がおり、彼女は、埃を吸って死んだ。Jabavu は、17歳になる部落出身の少年で飢餓状態にある。しかし、南にある大都会Johannesburgに憧れている。アフリカ人は、健康のために豆、野菜、肉そしてナッツを食べる。彼の母は、35歳にもならない若い女性である。(P.213) 
     誰かが戻ってくるあるいは村を通って通り過ぎると、Jabavuは、走って素晴らしい生活の話、冒険、興奮を聞きに行く。Pavuという仲間と一緒に街を目指す。街から送金できるため、両親は反対しない。Jabavuは、そう思っている。(P.227)Jabavuは、何も恐れていない。しかし、夜になっても街には着かない。空腹で飢えており胃もくたびれていて、足は、骨が内側で柔らかくなるかのように震えている。(P.236)

    花村嘉英(2022)「ドリス・レッシングの Hunger” 「飢え」で執筆脳を考える」より

  • ドリス・レッシングの Hunger” 「飢え」で執筆脳を考える1

    1 先行研究

     文学分析は、通常、読者による購読脳が問題になる。一方、シナジーのメタファーは、作家の執筆脳を研究するためのマクロに通じる分析方法である。基本のパターンは、まず縦が購読脳で横が執筆脳になるLのイメージを作り、次に、各場面をLに読みながらデータベースを作成し、全体を組の集合体にする。そして最後に、双方の脳の活動をマージするために、脳内の信号のパスを探す、若しくは、脳のエリアの機能を探す。これがミクロとマクロの中間にあるメゾのデータとなり、狭義の意味でシナジーのメタファーが作られる。この段階では、副専攻を増やすことが重要である。 
     執筆脳は、作者が自身で書いているという事実及び作者がメインで伝えようと思っていることに対する定番の読み及びそれに対する共生の読みと定義する。そのため、この小論では、トーマス・マン(1875-1955)、魯迅(1881-1936)、森鴎外(1862-1922)の私の著作を先行研究にする。また、これらの著作の中では、それぞれの作家の執筆脳として文体を取り上げ、とりわけ問題解決の場面を分析の対象にしている。さらに、マクロの分析について地球規模とフォーマットのシフトを意識してナディン・ゴーディマ(1923-2014)を加えると、“The Late Bourgeois World”執筆時の脳の活動が意欲と組になることを先行研究に入れておく。 
     筆者の持ち場が言語学のため、購読脳の分析の際に、何かしらの言語分析を試みている。例えば、トーマス・マンには構文分析があり、魯迅にはことばの比較がある。そのため、全集の分析に拘る文学の研究者とは、分析のストーリーに違いがある。文学の研究者であれば、全集の中から一つだけシナジーのメタファーのために作品を選び、その理由を述べればよい。なおLのストーリーについては、人文と理系が交差するため、機械翻訳などで文体の違いを調節するトレーニングが推奨される。
     なお、メゾのデータを束ねて何やら観察で予測が立てば、言語分析や翻訳そして資格に基づくミクロと医学も含めたリスクや観察の社会論からなるマクロとを合わせて、広義の意味でシナジーのメタファーが作られる。

    花村嘉英(2022)「ドリス・レッシングの Hunger” 「飢え」で執筆脳を考える」より

  • シナジーのメタファーの作り方10

    6 まとめ

     今後は、作家の数を増やすことが課題になる。その際、バランスを意識して、東西南北とかオリンピックをイメージする。また、一作家の異なる小説間のリンクのみならず、作家違いでもデータベース間でリンクが張れると、予期せぬものが見えてくるため、シナジーのメタファーは分析力が上がっていく。文学をマクロに研究するには、やはり地球規模とフォーマットのシフトが必要十分な条件となる。

    【参考文献】
    井上靖 『わが母の記』 講談社 2012
    日本成人病予防協会監修 『健康管理士一般指導員受験対策講座』テキスト3「心の健康管理」ヘルスケア出版 2014 
    日本成人病予防協会監修 『健康管理士一般指導員受験対策講座』テキスト6「身体を守る健康知識」ヘルスケア出版 2014 
    花村嘉英 『計算文学入門-トーマス・マンのイロニーはファジィ推論といえるのか?』 新風舎 2005
    花村嘉英 『从认知语言学的角度浅析鲁迅作品-魯迅をシナジーで読む』 华东理工大学出版社 2015
    花村嘉英 『日语教育计划书-面向中国人的日语教学法与森鸥外小说的数据库应用(日本語教育のためのプログラム-中国語話者向けの教授法から森鴎外のデータベースまで)』 南京东南大学出版社 2017
    Elkhonon Goldberg, 沼尻由紀子訳 『脳を支配する前頭葉』 講談社 2007
    Nadine Gordimer The Late Bourgeois World Penguin Books, 1966(福島富士男訳『ブルジョア世界の終わりに』スリーエーネットワーク、1994)

    花村嘉英(2018)「シナジーのメタファーの作り方について」より

  • シナジーのメタファーの作り方9

    5 シナジーのメタファーのメリット

     作家の執筆脳を探るシナジーのメタファーの研究は、①Lのストーリーや②データベースの作成、さらに③論理計算や④統計処理が必要になる。しかし、最初のうちは、ある作品について全てを揃えることが難しいため、4つのうちとりあえず3つ(①、②、③または①、②、④)を条件にして、作家の執筆脳の研究をまとめるとよい。以下に、シナジーのメタファーのメリットをまとめておく。

    【メリット】
    ・作家の執筆脳を分析する際、定番の読みを再考する機会が得られる。
    ・データベースの作成は、作品の重読と見なせるため、外国語の習得にも応用できる。
    ・データベースに文系と理系のカラムがありリレーショナルといえるため、人の目には見えないものが見えてきて客観性が上がる。
    ・その際、フロントのカラムだけではなく、セカンドのカラムも考えると分析が濃くなる。
    ・形態解析ソフトなど新たにインストールすることなく、マイクロソフトのWordやExcelで手軽に取り組むことができる。
    ・データ分析により平易な統計処理ができるようになる。
    ・論理計算を習得すれば、言語文学に関する認知科学の知識が増える。
    ・作家違いでデータベース間のリンクが張れると、部門間でも相互依存関係が期待できる。
    ・人間の世界を理解するには、喩えだけでは不足があるため、作家を一種の危機管理者と捉え、相互に依存した人間の条件を分析していく。例えば、危機管理者としてのボーダーラインを設定する。
    ・作家の執筆脳は、世界中であまり研究対象になっていないため、研究に取り組めば、難易度の高い研究実績として評価が得られる。
    ・ブログやホームページを公開する際、複数の言語を使用しながら、世界レベルの研究実績として紹介できる。

     例えば、シナジーのメタファーを外国語の習得に応用する際、エクセルファイルのカラムAに原文を順次入力していく。入力が終わったら、各行の原文を読みながら一行ずつ購読脳と執筆脳のカラムに数字を入れていく。これがリレーショナルとなり、単なる受容の読みとは異なるLの読みを提供するため、シナジーのメタファーを重読の一つに数えることができる。
     また、非言語情報のジェスチャーに、例えば、顔の部位の表情を加えると、脳の電気信号の流れをつかむための判断材料になり、セカンドのカラムも意義あるものとなる。

    花村嘉英(2018)「シナジーのメタファーの作り方について」より

  • シナジーのメタファーの作り方8

     購読脳の出力「認知症と適用能力」が執筆脳と想定している「記憶と連合野のバランス」と組になれば、シナジーのメタファーが成立するため、以下では脳のバランスの取り方について考える。
     脳のバランスの取り方は、文体と同様に十人十色であり、生活や仕事上の工夫なども脳のトレーニングになる。連合野をつなぐ神経細胞のネットワークの舵取りは前頭葉がしており、井上靖個人のバランスの取り方に近い一般の脳の活動が見えてくれば、「井上靖と連合野のバランス」というシナジーのメタファーを想定することができる。例えば、ジャンル違いによる執筆脳の違いを分析するのも面白い。想定しているシナジーのメタファーの分析がさらに細かくなるためである。
     ゴーディマの中でも述べたように、男性と女性で前頭葉の舵取りには違いがあり、適応型の意思決定については、井上靖(男性)の場合、状況依存型を好む。さらに状況依存型において、男性は左前頭前野皮質が活動し、言語情報を処理する場合、左半球の前部と後部がともに活動する。また、男性は片側の大脳半球の前後をつなぐ白質繊維束が大きく、片側の大脳半球の前後の機能的統合が顕著である。(表3参照)
     作者は、人間関係など熟知していることを前頭葉(思考、計画、判断)、側頭葉(聴覚)、頭頂葉(触覚)、後頭葉(視覚)などの連合野で調節しながら、家族人としてこの作品を執筆している。Goldberg (2007)によると、慣例化とか熟知性については、左前頭葉の活動が活発であり、未経験の課題、つまり新奇性は、脳の右半球と関係があるため、右前頭葉が活動する。マクロのバランスを整えるために2x2のルールがある。シナジーのメタファーの鍵となるLのイメージが組の集合体からなるため、ここでは二分率による問題解決を試みる。
    「わが母の記」の執筆脳は、家族崩壊のリスクを回避するという優先事項に基づいた適応型の意思決定である。作者は男性であるため状況依存型を好み、左前頭前野と共に言語情報を処理する作者の左半球が前後に活動している。作成したデータベースから作品の記憶を種別で見ると、長期記憶が多く、意思決定は優先事項に基づいた適応型であるため、作業記憶との関連も見られる。

    花村嘉英(2018)「シナジーのメタファーの作り方について」より